雄琴のソープランド運営会社が告発された経緯
滋賀県大津市の雄琴温泉でソープランドを運営する有限会社「新晃」と、同社の実質的な経営者である京都市山科区の49歳の男が、法人税法違反と消費税法違反の疑いで、大阪国税局から大津地方検察庁に告発されていた。
産経新聞が9月29日の関係者取材として30日朝に報じ、同日、読売テレビ、ABCテレビ、BBCびわ湖放送、京都新聞などが相次いで伝えた。BBCびわ湖放送によると、大阪国税局が告発を発表したもので、告発自体は2026年2月26日付だという。告発から公表まで約7か月の時間差がある。
報道を総合すると、事件の骨格は次のとおりだ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 告発された者 | 有限会社「新晃」(大津市)と実質経営者の男(49)=京都市山科区 |
| 告発したのは | 大阪国税局(告発先は大津地検) |
| 罪名 | 法人税法違反、消費税法違反などの疑い |
| 対象期間 | 2021年2月〜2024年1月(約3年間)※京都新聞は2022年1月〜2024年1月と報道 |
| 隠した所得 | 約2億4900万円 |
| 脱税額 | 計約8700万円(法人税約6100万円、消費税約2600万円=読売テレビ報道) |
| 資金の使途 | 有価証券や暗号資産の購入に充てたとみられる |
読売テレビによると、新晃が経営していたのは雄琴温泉の風俗店「アムアージュ」だという。実質経営者の男は新晃とは別の会社で役員を務めていると報じられている(産経新聞)。男の認否は報じられていない。
「女性から徴収した金」を売上に計上せず
脱税の手口として各社が伝えているのは、主に次の2つだ。
- 雑収入の除外:店に在籍する複数の女性従業員から徴収した金を、帳簿に記載しなかった(京都新聞、ABCテレビ)。産経新聞は、女性キャストから「雑費」として徴収した金を法人所得に計上していなかったと報じている
- 架空経費の計上:実際には存在しない経費を計上し、所得を圧縮した(京都新聞、BBCびわ湖放送、読売テレビ)
読売テレビは、従業員の女性らから徴収した「売上金の一部」を帳簿に記載しなかったと表現しており、徴収した金の名目や1人あたりの金額、対象となった女性の人数などは明らかになっていない。
ソープランドでは一般に、客が店に支払う料金と、店で働く女性が受け取る報酬の流れが入り組んでおり、店側が女性から部屋代や備品代などの名目で金を受け取る形が取られることもある。今回の事件では、こうした「女性側から店側に入る金」が法人の収入として扱われず、帳簿の外に置かれていた疑いが持たれている。
隠した所得は有価証券と暗号資産へ
大阪国税局や国税庁の説明として京都新聞が報じたところによると、男は不正に得た金を有価証券や暗号資産の購入に充てていたとみられる。産経新聞は、申告しなかった所得の「大半」を使い、個人名義で購入していたと伝えている。
法人の売上を除外して経営者個人の資産に振り替える形は、査察事案でしばしば見られる構図だ。暗号資産は近年、国税当局が資金の流れを追う対象としても重視しており、今回の事件でも使途として明示された。
告発後の手続き
国税局の「告発」は、強制調査(査察)で集めた証拠をもとに、検察に刑事処分を求める手続きだ。告発を受けた検察は、起訴するかどうかを判断する。今回の件で、大津地検が起訴したかどうかは報道では明らかにされていない。
法人税法は、偽りその他不正の行為で法人税を免れた者について、10年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金、またはその併科を定めている。脱税額が1000万円を超える場合、罰金は脱税額相当額以下まで引き上げることができる。法人そのものにも罰金を科す「両罰規定」があり、今回も会社と実質経営者の双方が告発の対象となっている。
刑事手続きとは別に、本来の税額に加えて重加算税などの追徴課税も課されるのが通例だ。
要点の整理
- 大阪国税局が、雄琴温泉のソープランド運営会社「新晃」と実質経営者の男(49)を法人税法違反などの疑いで大津地検に告発していた
- 告発は2026年2月26日付で、9月29〜30日に報道で明らかになった
- 約3年間で所得約2億4900万円を隠し、法人税と消費税計約8700万円を免れた疑い
- 女性従業員から徴収した金を帳簿に載せず、架空経費も計上していたとされる
- 隠した所得は有価証券や暗号資産の購入に充てられていたとみられる
背景:摘発が続く性風俗業界と「税」の視点
雄琴温泉は琵琶湖の西岸に位置し、1970年代以降、関西有数のソープランド街として知られてきた。京都市内から近く、関西一円から客を集める歓楽街だ。
2026年は全国でソープランドをめぐる摘発が相次いでいる。当サイトでも、東京・吉原、神戸・福原、仙台、松山・道後などで、経営者らが売春防止法違反(場所提供や売春をさせる契約)の疑いで逮捕された事件を報じてきた。それらは警察による「営業の中身」への捜査だったのに対し、今回は国税当局による「お金の流れ」への捜査という点で性質が異なる。
性風俗業界の脱税事件は過去にも繰り返し摘発されている。現金取引が中心で売上を把握しにくいこと、店と働く女性の関係が雇用か業務委託かあいまいで、金の出入りが帳簿に表れにくいことなどが背景として指摘されてきた。今回の事件で焦点となったのも、まさに女性から店に入る金の扱いだった。
一方で、店が女性から金を徴収する仕組みそのものは、働く女性の側から見れば手取りを減らす要因でもある。徴収の名目や金額が適正だったのかどうかは、税務とは別の論点として残る。今後、起訴されて公判が開かれれば、店の収益構造がどこまで明らかになるかが注目される。
本記事は産経新聞、京都新聞、読売テレビ、ABCテレビ、BBCびわ湖放送の報道をもとに構成しています。