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茨城・坂東市で「タイ古式マッサージ店」装い性的サービスか 禁止地域営業の疑いでタイ国籍の女3人逮捕

茨城県警は2026年9月16日、坂東市辺田のマッサージ店を家宅捜索し、タイ古式マッサージ店を装って男性客に性的サービスを提供したとして、いずれもタイ国籍の経営者の女(64)と20代の従業員の女2人の計3人を風営法違反の疑いで逮捕した。茨城県の条例では坂東市は市域全体が店舗型性風俗特殊営業の禁止地域にあたる。捜査の端緒は2026年初めにインターネット上で見つかった店舗に関する書き込みで、捜索時に店内にいた男性客が「性的サービスを受けた」と説明したという。認否は明らかにされていない。

茨城・坂東市で「タイ古式マッサージ店」装い性的サービスか 禁止地域営業の疑いでタイ国籍の女3人逮捕

9月16日、坂東市辺田の店舗を家宅捜索

茨城県警は2026年9月16日、茨城県坂東市辺田にあるマッサージ店を家宅捜索し、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)違反の疑いで、同店経営者のカワイ・パウィーヌット容疑者(64)ら女3人を逮捕した。3人はいずれもタイ国籍で、経営者以外の2人は20代の従業員だという。

NHKが9月17日午後6時4分に報じたほか、テレビ朝日系(ANN)が同日午前7時53分、ABEMA TIMESが同日午前8時56分にそれぞれ配信している。

報じられている事実関係は次のとおりである。

項目 内容
逮捕日 2026年9月16日(報道によれば家宅捜索時に現行犯逮捕)
逮捕者 経営者のカワイ・パウィーヌット容疑者(64)、従業員の女2人(20代)。いずれもタイ国籍
場所 茨城県坂東市辺田のマッサージ店
容疑 店舗型の性風俗店を営業できない地域で、客に性的サービスを提供するなどした疑い(風営法違反=禁止地域営業)
表向きの業態 タイ古式マッサージ店
捜査の端緒 2026年初め、インターネット上にあった店舗に関する書き込み
捜索時の状況 店内にいた男性客が「性的サービスを受けた」と説明
認否 明らかにされていない
今後 押収した書類などを解析し、実態解明を進める

店名、営業期間、売上、在籍していた女性従業員の人数は、いずれも報道時点で公表されていない。3人の認否が明らかにされていない以上、本稿の記述は捜査段階の容疑事実にとどまる。

坂東市は「市域全体」が禁止地域

この事件を理解するうえで欠かせないのが、茨城県における店舗型性風俗特殊営業の禁止地域の広さである。

風営法28条1項は、ソープランドや店舗型ファッションヘルスなどの「店舗型性風俗特殊営業」について、都道府県が条例で定める区域では営業してはならないと定めている。これを受けた茨城県風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例(昭和39年茨城県条例第50号)11条・別表第1は、禁止地域として県内の市町村名をほぼ全面的に列挙しており、そこには坂東市も含まれている。

同条例の別表第1で「禁止地域から除かれている」のは、水戸市天王町および泉町三丁目の一部地番と、土浦市桜町二丁目の一部地番だけである(地番はいずれも平成27年10月1日時点のもの)。つまり茨城県では、

  • 水戸市・土浦市の一部の限られた地番を除き、
  • 坂東市を含む県内のほぼ全域で、

店舗型の性風俗店はそもそも開業できない。届出をしているかどうか以前の問題として、その場所では営業自体が成立しない。

禁止地域で営業した場合の罰則は、風営法49条により2年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金、またはその併科である。

今回の事件が「無届け」ではなく「営業できない地域での営業」として報じられているのは、この構造による。届出を出しに行っても受理される余地がない地域だった、ということである。

「マッサージ店」という表示が置かれた場所

報道によれば、店はタイ古式マッサージ店を装っていた。

リラクゼーションやボディケアと呼ばれる業態は、性的サービスを伴わないかぎり風営法の規制対象ではなく、公安委員会への許可も届出も必要としない。禁止地域の制約も受けない。国家資格を要する「あん摩マッサージ指圧」とは別枠で、事実上どこでも看板を掲げられる。

この「規制の外側」に見える表示は、禁止地域が広い県ほど機能してしまう。茨城県のように県内のほぼ全域で店舗型性風俗営業が禁じられていれば、性的サービスを提供する店は、合法的な店舗として表に出る道を初めから持たない。残るのは、無店舗型(デリバリーヘルス)に移るか、別業態の看板の下に入るかである。

警察庁が公表した「令和6年における風俗営業等の現状と風俗関係事犯等の取締り状況について」にも、主要検挙事例として「メンズエステ店を仮装した店舗における禁止区域等営業事件」(長崎県警察、令和6年10月検挙)が挙げられている。マンションの個室でメンズエステ店を装い、男性客に女性従業員が性的サービスをしていたという事案で、今回の坂東市の件と構図はほぼ同じである。業態名が「メンズエステ」か「タイ古式マッサージ」かの違いにすぎない。

当サイトでも、京都駅近くのマンション4部屋を使った禁止区域の無届け性風俗営業の摘発を9月に取り上げている。都市部と地方、マンションと路面店という違いはあっても、「別の業態を名乗る」という一点は共通している。

届出済みの店舗型は減り続けている

警察庁の同資料は、性風俗関連特殊営業の届出数についてこう記している。

店舗型性風俗特殊営業の届出数は、継続して減少し、無店舗型性風俗特殊営業及び映像送信型性風俗特殊営業の届出数は、継続して増加している。

令和6年末時点の届出数は、店舗型性風俗特殊営業が6,651件(令和2年の7,402件から5年連続で減少)、無店舗型性風俗特殊営業が22,761件(うち派遣型ファッションヘルス等が21,346件)である。届出ベースで見れば、店舗型は無店舗型の3分の1以下にまで縮んでいる。

数字が示しているのは、店舗型という営業形態が制度上ほぼ袋小路にあるという事実である。禁止地域の指定は年々広がりこそすれ狭まることはなく、既存店は廃業すれば同じ場所に戻れない。その結果として、合法的な店舗型は減り、規制の外側に見える看板を掲げた店と、届出を出したデリバリーヘルスの二つに需要が振り分けられていく。

捜査の入り口が「ネット上の書き込み」だったこと

もう一つ注目されるのは、捜査の端緒である。茨城県警は、2026年初めにインターネット上で見つかった店舗に関する書き込みをきっかけに捜査を始めたと説明している。逮捕までおよそ8か月かかっている計算になる。

看板を出さない店、あるいは別業態を名乗る店にとって、集客はネット上の情報に依存せざるを得ない。客に場所とサービス内容を伝える手段が口コミと広告しかないからである。ところが、その同じ情報は捜査機関からも等しく見える。実態を隠すほど、実態を知らせる書き込みの重要性が上がる——という逆説が、この種の店には構造的に埋め込まれている。

捜索時に店内にいた男性客が「性的サービスを受けた」と説明したことも、報道では摘発の決め手の一つとして触れられている。現場で客の説明が得られたことが、禁止地域営業の立証に直接つながったとみられる。

背景

今回の件には、単独の摘発として片づけられない論点が三つある。

第一に、「歓楽街のない街」での摘発である。坂東市は人口約5万1500人(2026年9月1日現在・市発表)、圏央道坂東インターチェンジから車で10分という、都心から50km圏の郊外都市である。歓楽街と呼べる集積はない。性風俗の摘発というと新宿・歌舞伎町や大阪・ミナミが想起されがちだが、実際には車で通える郊外の路面店が捜査対象になっている。禁止地域が県内ほぼ全域に及ぶ県では、違法営業もまた県内のどこにでも分散し得る。

第二に、逮捕された3人全員が外国籍の女性だったという点である。報道では在留資格や就労の経緯、3人の間の関係性(誰が誰を雇っていたのか、報酬はどう配分されていたのか)は明らかにされていない。経営者として立件された人物が、別の局面では搾取される側でもあり得る、という可能性は、現時点の報道からは判断できない。政府は2026年9月、人身取引対策の新たな行動計画の原案を取りまとめており、外国人が関わる性風俗事案では、摘発と被害者認定の両面から見る必要があることが繰り返し指摘されている。東京地裁が9月15日に判決を言い渡した湯島の個室マッサージ店の事件でも、店で働いていたのはタイ国籍の親子だった。

第三に、禁止地域規制が「場所」でしか線を引けないという限界である。風営法28条は、どこで営むかを基準に違法性を判定する。看板の文字や広告の文言は規制の対象ではない。したがって、マッサージ店やリラクゼーション店を名乗ること自体は違法ではなく、その中で性的サービスが提供されて初めて禁止地域営業が成立する。外形からは判別できないため、摘発には内偵と現場確認が要る。今回、端緒から逮捕まで8か月を要したのは、この立証構造の帰結でもある。

摘発は、違法な営業を一つ止める。だが、店舗型が制度上ほぼ営業できない県で需要だけが残るかぎり、別の看板と別の場所で同じ形の店が立ち上がる余地はなくならない。今回の坂東市の件は、その反復が都市の繁華街ではなく郊外で起きていることを示している。

なお、逮捕された3人の認否は明らかにされておらず、有罪判決が確定するまで3人は無罪と推定される。

本記事はNHK、テレビ朝日系(ANN)、ABEMA TIMESの報道、および警察庁「令和6年における風俗営業等の現状と風俗関係事犯等の取締り状況について」、茨城県風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例、坂東市の公表資料をもとに構成しています。店名・営業期間・売上・従業員数は報道時点で公表されておらず、本稿でも触れていません。