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違法スカウト摘発、今年上半期に49人で前年同期比22人増 うち大学生10人「漫画を見て自分もやろうと」

警視庁は2026年8月6日、今年1〜6月に東京都迷惑防止条例違反(勧誘)の疑いで逮捕した男性が49人にのぼり、前年同期比で22人増えたと発表した。うち大学生は10人(同7人増)で、全体に占める割合は約20.4%と9.3ポイント上昇している。逮捕場所は新宿・歌舞伎町が31人と半数を超え、「同級生に誘われた」「スカウトが主人公の漫画を見て自分もやろうと思った」といった供述が目立つという。昨年1年間の検挙が60人であることを踏まえると、上半期だけでその8割に達したことになる。

違法スカウト摘発、今年上半期に49人で前年同期比22人増 うち大学生10人「漫画を見て自分もやろうと」

警視庁が8月6日に公表した数字

警視庁は2026年8月6日、今年1月から6月までの半年間に、東京都迷惑防止条例違反(勧誘)の疑いで逮捕した男性が49人にのぼったと発表した。前年同期と比べて22人の増加である。朝日新聞が8月7日に、産経新聞とFNNプライムオンライン(フジテレビ系)が同日から8日にかけて、それぞれ報じた。

同条例が禁じる「勧誘」とは、公共の場所で、不特定の相手に対して性風俗店や接待飲食店での就労を持ちかける、いわゆるスカウト行為を指す。今回発表されたのは、その現場摘発の統計である。

警視庁が強調したのは総数そのものよりも、その内訳だった。逮捕された49人のうち10人が大学生で、前年同期より7人増えている。全体に占める割合は約20.4%となり、前年同期から9.3ポイント上昇した。

数字の内訳

各報道が伝えた数値を整理すると、次のようになる。

項目 2026年上半期(1〜6月) 前年同期との比較
逮捕者数(男性) 49人 22人増
うち大学生 10人 7人増
大学生の割合 約20.4% 9.3ポイント増
20代 30人
10代 8人
新宿・歌舞伎町での逮捕 31人

比較の軸をもう一つ置くと、この数字の意味が見えやすい。朝日新聞によれば、昨年1年間の検挙は60人だった。今年は上半期だけでその8割超に達している。単純に倍のペースが続けば年間で100人近くになる計算だが、摘発は取り締まりの強度にも左右されるため、実際の行為者数がそのまま倍増したと読むことはできない。

なお、歌舞伎町での大学生の比率について、FNNプライムオンラインは「4人に1人が大学生」と伝えている。一方、朝日新聞と産経新聞が示した約20.4%は49人全体に対する比率である。数字の取り方が異なるため、ここでは断定を避ける。共通しているのは、大学生の関与が前年より明確に増えたという点である。

「同級生に誘われた」「漫画を見て」――供述に出てくる動機

朝日新聞の報道によれば、逮捕された大学生の大半は、都内や埼玉県の大学に通っていた。供述として挙げられているのは、次のような内容である。

  • 「同級生に誘われた」
  • 「気軽に稼げると思った」
  • 「スカウトが主人公の漫画を見て自分もやろうと思った」(複数の学生)

産経新聞も、金銭目的だけでなく、スカウト行為への「憧れ」から手を染めるケースが多いと伝えている。

警視庁生活安全特別捜査隊の山内大隊長は「アルバイト感覚で安易に手を出し、逮捕されて初めてことの重大さに気づく人も多い」とコメントした。同庁幹部は「安易にスカウト行為をすると必ず逮捕される。気軽なバイト感覚では絶対にやらないように」と注意を呼びかけている。

供述に現れる動機は、報酬の額よりも参入の心理的なハードルの低さを示している。誘う相手が同級生であり、参照するイメージが漫画である、という組み合わせは、この行為が「犯罪」としてではなく「業界の職種」として認識されていることを意味する。

現行犯逮捕の一例――約80メートルの付きまとい

産経新聞は、統計の発表とあわせて、実際の摘発事例を伝えている。歌舞伎町で女性に付きまとって勧誘したとして、警視庁生活安全特別捜査隊が、住居・職業ともに不詳の20歳の男を東京都迷惑防止条例違反の疑いで現行犯逮捕したという。

報道によれば、男は「僕スカウトなの」「仕事を何か探してたらさ、夜」などと声をかけながら、約80メートルにわたって執拗に勧誘した疑いが持たれている。

この「約80メートル」という数字は、条例の構造を理解するうえで重要である。一度声をかけただけで直ちに検挙されるわけではなく、相手が拒否した後も付きまとう、繰り返す、といった執拗さが立件の分かれ目になる。摘発現場では、勧誘がどれだけの距離・時間にわたって続いたかが記録される。

スカウト行為はどの法律で罰せられるのか

スカウト行為をめぐる規制は、行為者側と受け手側で異なる法令に分かれている。

対象 根拠 内容
スカウトする側 東京都迷惑防止条例第7条 公共の場所で、性風俗店や接待飲食店での就労を不特定の相手に勧誘する行為を禁止
店側 改正風営法(2025年6月28日施行) 性風俗店がスカウトに紹介料(スカウトバック)を支払う行為を禁止
悪質な紹介 職業安定法 有害業務への職業紹介などを禁止

弁護士等の解説によれば、東京都迷惑防止条例第7条違反の罰則は50万円以下の罰金または拘留・科料で、常習の場合は6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が加わる。法定刑としては軽い部類に属する。

今回の49人という数字が示すのは、この「軽い法定刑の条例」が、現場での身柄確保の手段として大量に使われているという実務の形である。スカウトグループの中核を職業安定法違反などで立件するには時間と証拠が要るが、路上での勧誘は現行犯で押さえられる。

背景――「店を締める」規制が進んだ1年と、末端の若年化

2025年6月に施行された改正風営法は、性風俗店の側からスカウトへの金の流れを断つことを狙った。紹介料の支払いを罰則付きで禁じるスカウトバック規制がそれである。2026年に入ってからは、この規定に基づく行政処分も出ている。東京都公安委員会は6月26日、豊島区東池袋の性風俗店に対し、スカウトへの紹介料支払いを理由に120日間の営業停止を命じた。都内では初の適用とされる。

つまり、この1年で強まったのは主に「金を払う側=店」への規制だった。今回の統計は、その裏側で路上に立つ側に何が起きているかを示している。逮捕者の8割近くが20代以下(20代30人、10代8人)で、大学生が2割を占める。組織の中核が摘発され、報酬の出所が規制されても、街頭で声をかける役割は補充が利く――そして、その補充元が学生層にまで広がっている、という構図である。

見落とされやすいのは、スカウトされる側の被害が数字に表れないことである。今回発表されたのは勧誘した側の逮捕者数であって、勧誘に応じて働き始めた女性が何人いたかは含まれていない。路上での摘発件数は、いわば水面に見えている部分にすぎない。

大学生が「アルバイト感覚」で参入しているという警視庁の指摘は、裏を返せば、この行為が若年層のあいだで犯罪と認識されていないということでもある。罰則の重さでは抑止が効きにくい領域であり、条例による摘発と並行して、大学側や学生本人への周知が課題として残る。


本記事は朝日新聞、産経新聞、FNNプライムオンライン(フジテレビ系)等の報道をもとに構成しています。数値・供述は各社報道に基づくもので、逮捕された者はいずれも捜査段階にあり、有罪が確定したものではありません。