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「捜査に名を借りた暴力」 違法スカウト「ナチュラル」の家宅捜索で暴行、元大阪府警巡査部長に有罪判決 起訴された捜査員6人のうち5人が有罪に

大阪地裁は2026年7月29日、全国最大規模の違法スカウトグループ「ナチュラル」の関係先を家宅捜索中に捜査対象の男性を殴ったとして特別公務員暴行陵虐罪に問われた元大阪府警捜査4課巡査部長・人見寛大被告(36)に、拘禁刑1年・執行猶予3年(求刑・拘禁刑1年)を言い渡した。押収したスマートフォンのロックを解除しようとして拒まれ、そのスマホで男性の顔を複数回殴打したと認定され、判決は「捜査に名を借りた暴力ともいうべき行為」と批判した。この捜索をめぐっては捜査員6人が起訴されており、報道によれば今回で5人目の有罪判決となる。摘発が加速する風俗スカウト捜査の裏側で、捜査手法そのものが法廷で裁かれる異例の展開が続いている。

「捜査に名を借りた暴力」 違法スカウト「ナチュラル」の家宅捜索で暴行、元大阪府警巡査部長に有罪判決 起訴された捜査員6人のうち5人が有罪に

判決の概要

大阪地裁(荒木未佳裁判官)は2026年7月29日、特別公務員暴行陵虐罪に問われた元大阪府警捜査4課巡査部長・人見寛大被告(36)に、拘禁刑1年・執行猶予3年の判決を言い渡した。求刑は拘禁刑1年だった。共同通信、産経新聞、時事通信、MBSニュースなどが同日に報じている。

人見被告は公判を通じて暴行の故意を否認していたが、判決は防犯カメラの映像や現場にいた他の捜査員の証言から、「複数回にわたり殴打した」として故意を認定。「捜査に名を借りた暴力ともいうべき行為」であり、警察官であれば当然理解できることだと指摘した。一方で被告が反省の情を示していることなどを考慮し、刑の執行を猶予した。

被告は本件で停職6カ月の懲戒処分を受け、2026年3月に依願退職している。

項目 内容
判決日 2026年7月29日
裁判所 大阪地裁(荒木未佳裁判官)
被告 人見寛大被告(36)=元大阪府警捜査4課巡査部長
罪名 特別公務員暴行陵虐罪
判決 拘禁刑1年・執行猶予3年(求刑・拘禁刑1年)
行政処分 停職6カ月、2026年3月に依願退職

何が起きたのか——2025年7月の家宅捜索

事件が起きたのは2025年7月15日から16日にかけて。大阪府警捜査4課は、全国最大規模の風俗スカウトグループ「ナチュラル」の関係先として、大阪市西区のビルの一室を家宅捜索した。報道によると、現場には20人を超える捜査員が入り、捜査対象となっていた男性3人がいた。

判決が認定した人見被告の行為は、次のようなものだったとされる。

  • 捜査対象の男性から押収したスマートフォンのセキュリティロックを解除しようとした
  • 男性が解除に応じなかったため、その男性自身のスマートフォンで顔面を複数回殴打した
  • 同じ場面で、別の捜査員が男性の髪をつかんで引っ張っていた

暴行を受けたのは20代の男性で、捜査対象者だった。捜索は令状にもとづく適法な手続きとして始まったが、その現場で捜査員側の行為が刑事事件に転じた形である。

なお、本記事で扱う固有情報はいずれも各社の報道にもとづく。人数や処分件数など一部の数字は媒体によって集計範囲が異なるため、幅をもって示している。

起訴された捜査員6人のうち5人が有罪に

この捜索をめぐっては、人見被告以外にも複数の捜査員が刑事責任を問われている。報道で伝えられている経過を整理すると、以下のとおりである。

  • 2人が逮捕・起訴——当時の警部補・時長力被告(51)と巡査部長・阪口裕介被告(33)。両名とも懲戒免職となった。
  • 4人が在宅起訴——同じく特別公務員暴行陵虐罪。いずれも停職6カ月の懲戒処分を受けた。
  • 2026年1月26日——大阪地裁(加藤陽裁判官)は時長被告に拘禁刑2年・執行猶予3年、阪口被告に拘禁刑2年6月・執行猶予3年を言い渡した。阪口被告は被害者の1人にけがを負わせたと認定されている。判決は「粗暴な態様で、被害者が受けた肉体的、精神的苦痛から結果を軽く見ることはできない」と指摘しつつ、懲戒免職という社会的制裁を考慮して執行を猶予した。
  • 2026年7月29日——人見被告に有罪判決。時事通信によれば、起訴された6人のうちこれで5人が有罪判決を受けたことになる。

府警の処分も広範囲に及んだ。2026年1月の発表では、懲戒処分は12人(うち懲戒免職2人、停職6カ月6人)で、当時の刑事部長や捜査4課長を含む監督責任者らへの内部処分・訓戒まで含めると、報道された処分対象者は28〜35人に上る。一つの家宅捜索から生じた不祥事としては異例の規模である。

さらに、大阪地検から暴行を映した映像の照会を受けた際に「映像はない」と虚偽の報告をしたとして、同課の警部(45)が犯人隠避容疑で書類送検された。府警が現場に設置していた捜査用カメラの映像が一時的に消去された疑いも判明している。暴行そのものだけでなく、その記録の扱いまでが問題化した。

動機は「スマホのパスコード」だった

報道によると、起訴された6人は暴行の動機について、男性らからスマートフォンのパスコードを聞き出すためだった旨を説明している。今回の判決で認定された行為も、押収したスマホのロック解除をめぐるやり取りの中で起きた。

これは偶発的な感情の暴発というより、捜査上の必要から生じた圧力という構図を示している。「ナチュラル」のような匿名・流動型犯罪グループ(いわゆるトクリュウ)の捜査では、指示系統や送金の実態がスマートフォンやメッセージアプリの中にしか残っていないことが多い。端末の中身を開けるかどうかが、事件の全体像を描けるかどうかを左右する。

一方で日本の刑事訴訟法には、被疑者にパスコードの開示や生体認証への協力を強制する明文の制度がない。押収自体は令状で可能でも、中身を開く段階では本人の任意の協力か、技術的な解析に頼ることになる。今回の事件は、この「開かない端末」という壁の前で、現場が越えてはならない一線を越えた事案として位置づけられる。

背景——摘発の加速と、手続の適法性

「ナチュラル」は、女性を性風俗店やキャバクラに紹介して紹介料(スカウトバック)を得ていたとされる全国最大規模のスカウトグループで、2025年以降、警視庁・大阪府警などによる摘発が続いてきた。会長格の男が2026年1月に逮捕され、ナンバー2格とされる男も6月に職業安定法違反の疑いで逮捕されるなど、組織の中枢から末端の街頭スカウトまで捜査が広がっている。

こうした摘発は、悪質ホストクラブの売掛金問題や路上売春(立ちんぼ)と地続きの、女性を性産業に流し込む「入り口」を断つ取り組みとして進められてきた。2026年6月には改正風営法によるスカウトバックの禁止も本格運用に入り、取り締まりの法的な枠組みは強化されている。

今回の一連の判決が突きつけているのは、その摘発の正当性と、個々の捜査手続の適法性はまったく別の問題だという点である。取り締まる対象が悪質であることは、捜査員の暴行を正当化しない。判決が述べた「捜査に名を借りた暴力」という表現は、まさにその切り分けを示している。

加えて、違法な手続きで集められた証拠は、公判で証拠能力を争われうる。捜査側の逸脱は、本体である組織犯罪の立証そのものを危うくしかねない。組織を追い詰めるための無理が、結果として組織を利する——スカウトグループ捜査という現在進行形の局面で、そのリスクが具体的な有罪判決という形で可視化されたことになる。

本記事は共同通信、産経新聞、時事通信、MBSニュース、日本経済新聞等の報道をもとに構成しています。